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旅に出ること、変えてみること

  - 2011年2月25日  Culture

チュニジア、エジプト政権が崩壊した。バーレーン、リビア、イラン、アルジェリア、イエメンに飛び火して今後何処まで拡大するか目が離せない。北朝鮮、中国も情報管理に躍起になっているかに見える。インターネットが世界を変えた。約16, 7年程前、Netscape Navigator(FireFox の前身、元祖Web-Browser)があの形ではなく一般には未だ利用されていなかった頃、初めて出会った研究者が入力するSource CodeによるInterNet画面を見て衝撃を受け、産業革命にも匹敵する時代が何れ来るとは思ったものだが、InterNet によって独裁政権ですら一瞬で崩壊する現在の事態が起き得るとは当時は予想だにできなかった。

文明国の殆どの人々にとってInterNetなしでは、最早ビジネスが成り立たない、いや、先進国では最早生きていけないとまで言えるかも知れない。我が社の仕事もInterNetなしではなし得ないし、開業以来どれだけ多く InterNet のお陰を蒙っているか分からない。情報は InterNet のみでかなりのものが入手できるし、殆どの通信は、Email、Skype 等の Tool さえ使えば安価で充分満足できる。逆に、ビジネスの世界では未だに Fax 番号の記載を求めるケースが多いことは、日本的ビジネスにおける変化への対応の遅さを感じる。(Fax の良い点は担当者が休んでいても同室の関係者が内容を閲覧できることであるが、これは Security の観点からは欠点でもあり、Email なら複数のcc:を付ければカバーできる。)この遅さの最たるものがお役所仕事であり、日本の国民文化であるかも知れない。(ちょっと話を脇道に逸らすが、) TPP への参加に農業(農協?)関係者の多くが反対している。風に当たらなければ温室育ちの弱い野菜しかできない。これだけ国の借金があっても政治家の7割が得票目当てで、国民の8割が人任せ故に、官僚の9割が天下り先が減るとの理由で、慌てるそぶりもないとしたら、先進国を気取っている国の現況としては驚くべきことである。国民が国債の買い主であれば大丈夫という訳でもなく、徳政令でも発令して返済義務なしに出来ると考えている訳でもあるまい。尤も、国が破産しても先ず困るのは庶民であり、多くの政治家や裁判官や官僚やらの特権階級は海外にでも移住し安穏と暮らすことが出来るかも知れない。

先月Jacques Attali 氏がWBSのインタビューで、日本のこの閉塞感を打開するために、「旅に出ること」の重要性を説いていた。旅に出ないなら外国から人を迎えると良い。日本のことは日本人より外国人の目によく見えることも多い。Robert Feldman 氏等外国人の分析の的確さが良い例である。「灯台下暗し」と言われなくとも、中から外から、謙虚に多面的に物事を見ることが重要である。国際ライセンスを仕事にしていないとしても、旅に出て日本以外の世界を見ることがどれだけ見聞を広め、仕事の質を高めるために有益であるかは、言うまでもあるまい。InterNet で情報を集めるのみならず、実際に外国人と接して、外国の言葉を聞き、風景を見ることが重要である。

筆者もこの様な仕事をしておれば、慌ただしいスケジュールとは別に、最低1年に1度程度は多少ゆっくりと海外に出掛けることが必要であると考えている。昨年の秋、カナダのケベックからニューヨーク迄イタリアのMSC社客船Poesiaでクルージングをする機会があった。米加国籍者優先と言うことで、米国籍の友人夫妻と同行させて頂いた。クルージングはたった1週間程度であったが、食事は何時でも幾つかのレストランのうちの何処でも好きなところで出来る、スポーツジムはある、シアターはあるで、2回の正装ディナーも気にならず、日常とはまるで別世界の貴重な経験をすることが出来た。一方、仕事には極めて辛い環境であった。休暇を楽しむものには無縁と言うことであるのか、WiFi 環境の使用料の高さと粗末さには手を焼いた。Mail使用者には当たり前のOutlookやShurikenのソフトウェアでのmailの送受信ができず泣かされた。日本人にとっては「さすがイタリア」と、褒め言葉と貶し言葉が混在して出てきそうな豪華船内の生活にイタリア人のあの国民性を垣間見ることが出来た。

美しい町並みと素朴で有りながら国際的雰囲気のするカナダのニューポート、これまで仕事以外では訪れたことのなかったボストンにも港からの一時上陸ができた。米国建国当時のレトロな町並みを味わうことが出来たし、店の女主人の客に媚びない立ち振る舞いも新鮮ではあった。

この原稿を書いている最中にニュージランド、クライストチャーチでの大地震のニュースが流れてきた。海外に積極的に目を向けた未来有る多くの若者が被災されたことは実に残念なことである。多くの被災者の方々の無事を祈りたい。今回は将に天変地異によるForce Majeure であり避けようのない事故であり旅に出なくとも起き得る事故であったろう。

一方、旅に出ればそれなりに危険も増す。特に海外では予想外のことが起き得る。今回の旅行でも、NJのコンドミニアムで帰国2日前の外出直前にブレイカーダウンによる停電があり修繕を頼んで外出した。1 日置いて帰国準備中に、何故か土産物の複数の装飾品が見あたらないことに気付き、管理事務所に連絡したが結局見つからなかったという同行者の残念な話も聞いた。歴史と文化政治環境の異なる国、相手とのつきあいにはそれなりの繊細さと注意が必要であり、実際に出掛けて、入り込んで、付き合ってみなければ、本やInterNetで見ただけの知識は身には着かない。

医薬品の世界でも海外に目を向けなければ日本はやっていけない。日本の30年前の医薬品市場シェアは世界の25%であり、国内だけで食っていける時代でもあった。現在は、国内シェアは世界の8-9%程度ではないか。欧米企業とのつきあいに仮に慣れたと言っても、中国企業とつきあい、インド企業と交渉するのは、何故かまだ骨が折れる。だからといって、付き合わない訳にはいかない重要な相手国である。思えば、国際ライセンス業務に関わり、最初に欧米人との契約交渉を担当した頃、相手側のライセンス担当者や弁護士の強硬さに随分苦労したものであるが、その後、彼らの多くに何故か共通する強点と弱点を発見して以来互角以上の交渉が出来、日本側企業にも多くの利益をもたらす提携が出来る様になったではないか。

専門領域でのプロを目指す若者、少しでも自らの専門性を磨きたい経験者、何れにとっても「思い切って現在のやり方を変えてみる」、「せめて、試しにやってみる」、「飛び込んでみる」、この精神こそが道を拓いてくれ、「目からポロリと鱗が落ちて」、予想だにしなかった大きな可能性を与えてくれるであろうことは疑う余地のないことである。

2011-2-25 [EDIT]




 

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