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無防備

①「東横イン、条例違反のまま開業 神戸三ノ宮(Asahi.com 2006/02/02日12:43) ビジネスホテルチェーン大手「東横イン」の偽装工事問題で、神戸市中央区で建設工事が進められていた「神戸三ノ宮II」(14階建て、338室)が2日、開業した。同ホテルには身体障害者用の客室が整備されておらず、神戸市が兵庫県の条例違反にあたるとして是正を指導したばかりで、違反状態での開業となった。市は「条例には強制力がなく、営業を規制できない」としている。」これは、最近の記事である。

 

②また、「株売買単位統一へ見直し 東証社長09年までに (Asahi.com 2006/02/02日12:05) 東京証券取引所の西室泰三社長兼会長は2日の参院予算委員会で、現在1株から3000株まで7種類ある株取引の売買単位を統一する方向で09年までに見直しを進める方針を明らかにした。売買単位の混在は、証券会社による誤発注や東証のシステムに負荷がかかりすぎる原因のひとつになっている。(途中略)売買単位は現在、1、10、50、100、500、1000、3000の7種類ある。」これも同日の記事である。

 

二つの事件に共通な点は何であろうか?

 

①は、条例で定めた規制に罰則がなく規制が働かないのである。

②は、近未来のリスクを予測せずに安易に改定したルールの欠陥が顕在化したのである。共通点は、「無防備」と言うことである。

 

①は、「村社会、共通の価値観・文化を持った社会」(これまでの日本)では概ね通用した原則が、最近は通用しなくなったのである。国際社会では当然のことである。共通の価値観がない社会では、全てのことを事前に明瞭に書面にしておく必要がある。それが契約書である。先日も、UFJ信託銀行と住友信託銀行の件で話題になったが、相手が違反した場合の罰則を定めておくことも肝要である。(こんな大企業の弁護士でも、契約書のイロハを知らなかったのであろうか?結果はどうあれ、信用の下落は計り知れないであろう。)

 

殆どの国内企業は、大小を問わず、海外企業とのバイオ技術、医薬品のAlliance交渉に限って言えば、「夜の山道を案内人も付けず、地図も持たず、明かりなしで裸足で歩いている」様な状況が殆どである。多くの崖や谷があり、落とし穴が掘られているかも知れない夜の山道をである。崖から落ちて大怪我をして、始めてその恐ろしさに気付いたり、又殆どの場合は、何故怪我をしたかさえ気付いてない。

 

②にも関連するが、2/5の日経新聞社説に「大幅分割で取引単位が激増したライブドア株が東証システム負荷の一因となって市場機能を脅かし国際信用を傷つけた。」との記載があった。契約書の条項もそうであるが、これを規定すればどの様リスクがあるか考えておくのは当然である。分割を認める規定を作っておいて、分割行為自体をやり玉に挙げるとは。国際信用を落とした主因は、分割を認めながら分割により当然起こるリスクに対策しなかったことに尽きる。

 

ライセンス契約条項では、締結後3-5-10年程度経って問題が起きたら、「まさかそんなことが起きるとは思わなかった。予測出来なかった。」とのせりふを屡々聞く。契約書を書く場合には、予測可能なリスクで

 

i) 発生の可能性の高いリスク、

ii) 発生の可能性は低いが重篤なリスク、及び

iii)予測出来ないリスク、

 

の3つを考えて条文を作っておけば、殆どのリスクは、防げるか、最小化出来るのである。(知識と経験は必要となるが)これをやっておけば、最近のPfizer/大日本住友製薬訴訟(amlodipine)、第一製薬/Sanofi・aventis (plavix) 事件の結末は大きく違っていた可能性がある。

 

Bio-Venture等では、近い将来社運を揺るがす事件の元となる契約書が毎日の様に締結されているのである。単なる「無防備」の故にである。