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製品・技術の導入(1)

競合禁止条項-1

 

2005/7/6の日経新聞朝刊の記事によると、「第一製薬は5日、脳梗塞(こうそく)再発予防薬「プラビックス」(承認申請中)の国内の営業権を仏サノフィ・アベンティスに返還すると発表した。第一と経営統合する三共がプラビックスの競合薬を開発中のため提携内容を見直す。今後営業権はサノフィ日本法人が持ち、第一は販売支援や製造受託などの協力にとどめる。」と言うことである。

 

日本にも遂に、製薬企業の合併の波が押し寄せてきた。ライセンス担当者にとっては千載一遇のチャンスである。「Plavix」は全世界で年5,000.億円の売上げを誇る大型製品である。今回は、第一製薬の協力が引き続きあり、他の国内製薬会社が割り込める余地はないかも知れないが、今後同様のケースは増加するであろうし、導入できるチャンスも増えて来るのである。

 

今年9月に第一製薬と合併予定の三共が、Eli Lily & Co.と共同開発中の血小板凝集阻害薬「CS-747(一般名Prasugrel)」を持っているという理由で、第一製薬は、LicensorのSanofi-AventisにPlavixを返還せざるを得なくなったのであろうか?CS-747の血小板凝集阻害作用が如何に優れているとしても、欧州ではP-IIIであっても、日本国内では臨床初期段階ということであって、仮に運良く発売できるとしても、発売は10年後、と言うことである。この大きなリスクを勘案すると、今年中にほぼ間違いなく発売見込みのPlavixを返還するのは、第一製薬にとっても三共にとっても何とも許し難い大打撃であろう。

 

憶測で言わせて頂くなら、この原因は、導入契約書締結時の「競合禁止条項」の交渉の失敗であろう。この条文の書き方一つで、結果は、①返還せずとも済む、②返還しても対価が貰える、③只で返還せざるを得ない の何れかになり、①と③の違いは将に天国と地獄である。

 

これは決して、結果論ではないのである。ライセンス交渉で、将来の潜在リスクを見通した交渉ができたかどうか?第一製薬が、契約締結時に上記①、②を目指して交渉したのか?③で当然だと考えて交渉したのか?今、(仮に実際の条文が②か③であったとした場合に)契約書の失敗に気付いているのか?気付いるとしても、現在交渉している他のライセンス契約で又別の同様なミスを犯してはいないか?第一製薬のお話しではなく、一般論として考えてみた場合には、実に示唆に富んだ課題である。

 

まだまだ、多くの製薬企業の経営者は、自社のライセンス部門の実力が、研究開発部門の実力と同様に、会社の経営に重大な影響を与えるということすら気付いていない可能性が高いのである。昨今、内資、外資を問わず、製薬大手企業の法務部員や社内Lawyerの作成した契約書草案を見るに付け、涙の出るようなレベルのものが極めて多いのに驚かされる、ところが、作成したのが法務部員やLawyerであると言うだけの理由で、社内では誰も条文のチェックすらできていないのである。