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Japan Premium と契約交渉

このところ日米間協議の話題が多い。牛肉問題、沖縄の基地の一部をグアムに移転する際の日本側負担金の交渉など多くの話題がある。

 

私は、長きに亘って、医薬品・バイオ技術の交渉に関わり、日々、多くの事例を眺めてきた。医薬品・バイオ技術について言えば、欧米企業が日本企業と交渉するときには、10億円取れれば良いと思っておれば、最初に50億円(状況により100~15億円と幅はある)を提案し要求するのである。大部分の日本企業は、反論するとしても、50億円に対するcounter proposalは、精々、恐る恐るの35億円(状況により80-13億円)で有り、40億円程度で妥結する。この40-10=30をJapan Premiumと言うことがある。

 

なぜ、こうなるのか?日本は、概ね、社会の構成員全てが常識を共有出来る社会であり、相互信頼の社会である。相手が、自分の常識とかけ離れた提案をして来るということを想定することが出来ない。まさか、10億円のものを平気で50億円と言ってくる相手がいるとは考えもしないのである。相手を疑う術を知らないのである。欧米企業は、10億円が落としどころだと思っていても、日本企業が勝手に35億円迄しか値切らなければ、決着が35億円以下になることなどあり得ない。欧米企業は段々クセになり、遂には、Japan Premiumをenjoyするのである。

 

ライセンスのプロセスの中で、CDA(Confidentiality Agreement)の次に来るのがMTA(Material Transfer Agreement)である。日本企業が評価のために米国のAcademiaにsampleを提供する場合に、一番多いのが、sampleの受領者側が実施した試験の成果(IP:Intellectual Property Rightを含む)は、

 

①受領者側が独占的に所有する、但し、

②sample提供者は、自身の研究目的でIPの非独占的実施権を持つ、

③sample提供者は、自身の営業目的でIPの独占的実施権のためのFRR(First Refusal Right)を持つ、

 

と言うものである。

 

Sample 受領者がAcademiaではなく、大手企業だったりすると、③はなかったりすることもある。

 

ところが、驚いたことに、同じMTAでも、上記とは逆に、欧米企業がsample提供者で、日本企業がsample受領者の場合には、sampleの受領者側が実施した試験の成果(IP)の全てを ①sample提供者側が所有し、②sample受領者は、研究目的でのみ非独占的実施権を持つ、と言った合意点になってしまうのである。日本企業は、一般に争うことを好まない傾向が強いので、欧米企業言いなりになってしまうことも多い。何が国際標準なのか、又、欧米での独占禁止法の解釈がどうなっているのかも知らなければ、その様な結末になっても不思議はないのである。